聴きたい!…そして僕は途方に暮れる「大沢誉志幸」作曲の3曲
ふたたび時代や世代を超えて、昭和歌謡やシティポップの人気が再燃している。
大瀧詠一が特集された記事を目にしニヤリとし、吉田拓郎が、あいみょんなど現世代の人気アーティストの音楽ルーツのひとりだと聞いてうなずく。
なかでも、そんな昭和のミュージシャンを思うとき、卓越したメロディメイカーとして語りたいのは大澤誉志幸。
自身のバンド解散後、中森明菜や山下久美子などへシングル曲を提供し作曲家として知られるようになり、その後自身でもヒットを飛ばすことになるちょっと変わった経歴をお持ちな方。
その大澤のセンスが光る、色あせることない3曲はこちら。
沢田研二『おまえにチェックイン』
デヴィッド・ボウイを彷彿とさせる妖艶なメイクやコスチュームでテレビの音楽番組に出演していた印象のある日本歌謡界のスター、ジュリーこと沢田研二。
昭和57年リリースの36thシングル『おまえにチェックイン』で、作詞は柳川英巳。
口ずさみたくなる冒頭コーラス「♪ チュルルル…」は、沢田をはじめ、大澤、佐野元春、伊藤銀次という豪華な顔ぶれによるもので、とても貴重。
明るく軽快なで、ポップ・ソングのお手本のようなメロディが秀逸で歌詞はすこし大人向け。
吉川晃司『ラ・ヴィアンローズ』
昭和59年にデビューし、型破りなアイドルとして活躍していた吉川晃司が、同年9月にリリースした3thシングル。
エメラルドのカクテルに 消える光のあわ 飲み干して
You Say I Love You 聞こえないふり
エレクトリック・ドラムのビートが印象的で耳に残る、当時の洋楽のようなメロディにうまくのせた売野雅勇の歌詞とのバランスが絶妙で、今聴いても違和感がないカッコよさのある曲。
なんて危険な退屈だろう
当時20歳の吉川が歌うサビのセリフは、なんてキャッチ-な殺し文句なのでしょう。
大沢誉志幸『そして僕は途方に暮れる』
昭和59年にthシングルとしてリリースされた大澤の音楽家としての地位を不動にした代表曲。
作詞を担当しているのは、詩人としても知られる銀色夏生。
ジャンルをを超えた普遍的なサウンドは、ソウルやファンク、R&Bなどさまざまな音楽バックボーンがあったからこそ。
まだ20代だった2人の才能のぶつかり合いが生み出した作品といえる。
歌詞はひと夏のカップルが主人公の短編青春小説のようで、Bメロの
ふざけあったあのリムジン
遠くなる 君の手で
やさしくなれずに 離れられずに
思いが残る
から、サビの
もうすぐ雨のハイウェイ
輝いた季節は
君の瞳に何をうつすのか
この一節からはキラキラした情景が浮かび、
そして僕は 途方に暮れる
そして、あまりにも有名で詩的なこのフレーズで撃ち抜かれることになる。
大澤のすこしかすれたハスキーボイスは、夏のけだるさやせつなさを見事に表現していて歌詞の世界観とも絶妙な相性。
当時、海外の少女が登場した日清カップヌードルのCMソングにサビの部分が起用され、認知度アップにつながった。
また名曲ゆえ、Charaなど、たくさんのアーティストがカバーしており、サブスクで聴き比べしてみるものいいかもしれない。